脱税ニュース分析

No.022 宝飾販売業者による消費税法違反事件で「懲役7年6ヵ月」の実刑判決

報道によると、大阪地方裁判所は、2018年1月23日、海外から高級腕時計を仕入れたかの様に装い架空仕入を計上する一方、海外へ輸出販売したかの様にも装い架空売上を計上することにより、消費税など約17億円の不正還付を受けたなどとして、法人の代表である被告に対し、懲役7年6ヵ月、罰金6,000万円の実刑判決を言い渡しました。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、消費税の仕入税額控除制度と輸出免税制度の仕組みを悪用して行われた脱税事件で、法人の代表者が4社を使い分け、2010年から2016年の7年間もの長期に渡り、①海外から高級腕時計を仕入れたかの様に装い、架空仕入れを計上することで約11億円の仕入税額控除を受けるとともに、②消費税の還付を受ける為、架空の輸出販売を装い4社で約7億円の不正還付を受け、2016年10月、大阪地検特捜部に逮捕、起訴されていた事案となります。
本件事案は、典型的な消費税不正受還付事案で、主に、架空の輸出販売を用いた消費税の不正還付による脱税事案となります。消費税の不正還付を受ける為には、架空の輸出売上を計上する必要がありますが、一方で、不正還付請求の元となる仕入についても架空計上する必要がありますので、通常、雪だるま式に売上金額と仕入金額が膨らんでいくのが特徴です。架空仕入に係る消費税額が11億円とされていますので、当時の消費税率5%で計算すると、220億円もの架空仕入金額となり、一方、不正還付税額は7億円とされていますので、架空売上金額は140億円となり、本件事案がいかに巨額の脱税事案であったかが伺い知れます。消費税の脱税は、法人税や所得税などとは異なり、税金の還付を受けられることが特徴で、反面調査により不正を見破られにくくするという思惑もあり海外取引を装うケースが多いと言えます。こうした消費税の不正還付事案の増加に伴い、国税庁では、毎年、消費税事案を重点調査事案として積極的に査察調査を行っていますが、消費税の不正還付は、税金の詐取であり悪質性が高いものと考えられていますので、査察調査となれば、刑事告発される可能性は高くなります。また、本件事案では、執行猶予が付かない懲役7年6ヵ月の実刑判決が出ており、消費税の脱税については、特に、厳罰に処罰するという裁判所の強い姿勢の現れではないかと思われます。

本件事案からの教訓としましては、消費税の不正還付は、その手軽さと実際に還付金を手にできるという旨味から、安易な気持ちで手を染めてしまう事案が少なくありません。国税当局もこうした背景を踏まえ、還付事案については、税務調査レベルでも内容を細かく調べていますので、還付税額が多額で悪質と判断されれば、査察調査に切り替わる可能性は高いと見て良いでしょう。既に、架空の輸出売上や仕入などで消費税の不正還付を受けられている方は、早めに専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。