脱税ニュース分析

No.036 建設機械の製造販売会社が売上除外による脱税(約2,500万円)で刑事告発

報道によると、工作用電動カッターなどの製造・販売を手掛けている法人が、売上の一部を除外するなど、過去2年間で、約1億円の所得を過少に申告し、約2,500万円を脱税した疑いで、法人税法違反により刑事告発されました。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、建設関連事業者による典型的な売上除外による脱税事案となります。建設業をはじめとする現金決済による商慣習が未だ残っている業界での脱税事案であり、現金決済が脱税の温床となっていることは間違いないでしょう。本件事案は、売上除外による脱税とのことで、具体的には、現金回収した売上金の一部を除外し、代表者個人名義口座への現金入金や資金繰りの関係かと思われますが法人口座への現金入金を繰り返していた様です。中小規模の法人であれば、1億円もの売上を除外すれば、決算は赤字になるか、赤字にならないまでも利益率が極端に下がることとなり、税務調査の選定候補となる可能性は高まります。最近では、AIを活用して調査対象を選定しており、以前と比べ、より効率的に税務調査が行われているようになってきています。取分けAIにより選定対象となりやすいのは、利益率などの指標が同業他社と比べ極端に低いものが挙げられるでしょう。脱税の場合には、売上を除外するか、架空経費を計上するかの二択となりますので、簿外売上がないか架空経費がないかといった視点から徹底的に調べられることになります。決算書上では赤字になっているにも係わらず、多額の社長借入があるなど利益以上のキャッシュフローがあったりすると、どこか他に資金源があるのでは、現金売上を抜いているのではないかと怪しまれるのは当然です。そして反面調査まで行われている段階になっても、言い逃れをして否認していたりすると、悪質とみなされ、本件事案のように、査察調査に切り替わってしまう可能性は一気に高まると言えます。しかも本件事案は、脱税事案としては少額の2,500万円ほどの脱税で刑事告発されていますので、かなり悪質と判断されたものと推察します。コロナ禍以降、明らかに、脱税規模が小粒化しており、少額な脱税事案であっても、悪質な事案は査察調査に切り替わる可能性が高まっている様に思います。見せしめの一面もあるかと思いますが、今までとは状況ががらっと変わってきている印象がありますので、今後も、2,000~3,000万円以下の脱税事案であっても、査察調査に切り替わる事案が増えていくことが予想されます。

本件事案からの教訓としまして、脱税者のほとんどは、最初は少しだけならバレないだろう、現金取引であれば、査察調査に入られない限りはバレないだろうと高をくくっていますが、年々、査察調査のハードルは下がってきていますので、明日は我が身とご不安を抱えられている方も少なくありません。お一人で悩んでいても先延ばしするだけで問題は解決しませんので、早目に査察調査の経験もある専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。