脱税ニュース分析

No.031 キャッシュレス決済端末の販売会社を「消費税の不正受還付」で刑事告発

報道によると、キャッシュレス決済端末を販売する会社が、端末の仕入台数の水増しにより、不正に2,400万円ほどの消費税還付を受けた疑いで、国税局査察部が地方検察庁に刑事告発していたことが分かりました。強制調査はちょうど1年前に着手していたとのことです。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、国税庁が重点事案として積極的に取り組んでいる消費税事案となります。
国税庁が毎年6月に公表している「査察の概要」いわゆる「脱税白書」によると、平成29年頃から、消費税事案の告発件数の増加傾向が続いており、直近では刑事告発のおよそ3分の1が消費税事案となっています。
消費税の不正受還付事案は、仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用して行われ、他の税目とは異なり、納税額を減らすだけでなく、還付金を受け取れることから、安易に不正還付を行い、摘発される事案が増加していることが背景にあると思われます。不正受還付は、国庫金の詐取とも言え悪質性が高いことから、刑事裁判ではより重い刑罰が科される傾向にあります。消費税の計算は、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を控除して行われることから、故意に売上を少なくするか、仕入を多くすることで納税額を少なくしたり、還付金を受けることが可能となります。消費税の不正受還付事案では、故意に売上を少なく見せるよりも、仕入を多く見せる事案の方が多く、本件事案でも、販売商品の仕入台数を実際よりも水増し、架空仕入に係る仕入税額控除を受けていたとのことです。しかし、架空仕入の計上を行うと、それだけでは決算書の売上総利益の金額はマイナスとなるため、すぐにバレてしまいますので、通常は期末商品棚卸高の調整も行い、売上総利益率を例年と同じ水準に合わせることで、架空仕入の計上をバレにくくすることが多いかと思いますが、仕入台数の水増しは、仕入先に反面調査を行えばすぐにバレてしまいます。しかし、税務調査では少なくとも過去5年分の売上や仕入れの推移を見て、余程おかしいところがない限り反面調査まで行うことが少ない為、本件事案では、おそらく、期末在庫の突き合わせから脱税の端緒を把握されたのではないかと推察されます。実務上、消費税の還付を受ける場合には、例え不正還付を行っていなくても、税務署から「消費税還付申告の内容についてのお尋ね」の文書が届き、請求書などの帳票類の提出を求められますが、その対応の仕方を誤ると税務調査に発展し、本件事案の様に査察調査に切り替わるケースも少なくありません。

本件事案からの教訓としましては、査察調査の対象となる不正受還付事案であっても、任意調査の段階で適切に対応できていれば、査察調査への切り替わりを阻止できる可能性があると言うことです。特に、消費税の不正受還付事案は、国税庁も積極的に取り締まっていることから、現在、消費税の税務調査を受けられ、査察調査に切り替わるのではないかとのご不安を抱えられている方は、早めに専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。