脱税ニュース分析

No.029 人材派遣会社が「手配師」への架空手数料の計上により刑事告発

報道によると、2024年2月、工事現場に作業員や警備員などの人材を派遣する人材派遣会社が、実在しない手配師(日雇い労働者などの斡旋)への架空手数料の計上などにより、2億5,000万円ほどの所得を隠し法人税など6,000万円ほど脱税した疑いで、国税局から刑事告発されました。実在しない手配師への架空手数料の計上は、国税局の税務調査で判明し、査察調査に切り替わったとのことです。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、実在しない手配師への架空手数料の計上による所得隠しであり典型的な脱税事案と言えます。
建設需要の高まりで工事現場では人手が足りず、作業員や警備員など日雇い労働者を集め工事現場に派遣する仕事が増えてきていますので、本件事案でも売上の急激な増加が背景にあり、脱税に及んだものと推測されます。派遣先は、恐らく大手や準大手などで、売上の入金は通常、振込みで行われるはずですので売上自体をごまかすことはできません。そこで、架空経費を計上し利益を少なくする方法を考えた結果、手配師への架空手数料の支払いに目を付けたのではないかと思われます。本件事案では、日常的に手配師への斡旋手数料の支払いがあり、しかも現金払いであったことから、そこに着目し、実在しない手配師に対して手数料を払ったものと装い、多数の領収書を偽造していたのではないかと思われます。なお、この支払ったものとされる現金は、海外不動産のローンの支払いやそのままアタッシュケースに隠し持っていたとのことです。本件事案では、過去3年間で2億5,000万円ほどの所得隠しが認定されていますので、1年あたりで換算すると8,000万円ほどの架空経費の計上となります。手配師への手数料の相場はケースバイケースかと思いますが、40人として一人あたり年間200万円位になりますので、かなりの数の偽造領収書を作成していたのではないかと推測されます。こうした実在しない人物への架空経費の計上は、反面調査もできず、しかも現金払いであれば調査は難航したものと想像されます。その為、国税局の任意調査では限界となり、強制調査に切り替えざるを得なかったのではないかと思われます。本件事案は、最終的には、現金などのタマリから架空手数料を推計し、代表者も架空手数料の事実を認めたため、刑事告発に至ったものと推測されます。

本件事案からの教訓としましては、査察調査の対象となる脱税事案であっても、任意調査の段階で適切に対応できていれば、査察調査への切り替わりを阻止できる可能性があると言うことです。事案によっては顧問税理士の支援を受けられず、社長自らが直接税務調査の対応をしてしまい、査察調査へ切り替わってしまう事案も少なくありません。現在、所轄税務署や国税局の調査を受けられ、査察調査に切り替わるのではないかとのご不安を抱えられている方は、早めに専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。