脱税ニュース分析

No.017 測量会社が「架空外注費」の計上により法人税法違反で刑事告発

報道によると、大阪国税局は、2023年2月15日、取引先に資料作成などの業務を外注したかのように装い、約1億5,000万円の所得を隠し、法人税や消費税など約6,100万円を脱税したとして、測量会社と同社前会長を法人税法違反などの疑いで刑事告発しました。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、公共工事を請け負う道路測量会社が、測量資料の作成などを外注したかの様に装い、架空外注費を計上する手口で、2019~2021年の3年間で約1億5,000万円の所得を隠し、法人税や消費税など約6,100万円を脱税したとして、法人税法違反などの疑いで刑事告発された事案となります。

本件事案は、取引先や下請先と共謀し架空外注費を計上するという典型的な手口によるもので、脱税により得た資金は、貸金庫などに保管していたほか、株式や高級車などの購入に充てられていたとのことです。3年間で約1億5,000万円の所得隠しをしていたと言うことですので、1年あたり約5,000万円の架空外注費を計上していたことになります。架空外注費の場合、取引先等の協力が不可欠の為、元請会社と外注先といった力関係を利用し脱税を行っていたものと推察されます。また、報道によると、同じ大阪国税局による税務調査で脱税が判明したとのことですので、税務調査から査察調査に切り替わった事案となります。通常、税務調査は所轄税務署により行われますが、多額で悪質な脱税が疑われる事案については、国税局の資料調査課や査察部により調査が行われることになります。本件事案では、前会長らが調査に非協力的であったり、口裏合わせをするなど悪質であると判断された為、査察調査に切り替わったのではないかと推察されます。任意調査から査察調査に切り替わる事案では、刑事告発の可能性が非常に高くなる為、任意調査の段階で、専門税理士の判断を仰ぎ、然るべき対応を取って置くことが肝要となります。

本件事案からの教訓としましては、脱税は、遅かれ早かれバレてしまうということに尽きます。ただ、脱税している本人は、他と比べて規模も小さいし自分はバレないだろうと考えてしまうのでしょう。年間5,000万円の架空経費計上よる軽減税額(地方税や消費税を含む)は2,500万円ほどで、取引先等の協力金などを考慮すると1年で2,000万円ほどしか手元には残りません。これが多いか少ないかは一概には言えませんが、1回やってバレなければ2回3回と続けてしまい、摘発されるケースがほとんどなのです。また、任意調査から査察調査に切り替わる事案は、我々が想像している以上に多いのが現実ですので、任意調査の段階で、いかに対応策を講じられるかがポイントと言えます。査察調査を含め国税局の調査を経験したことがない税理士もいる様ですので、顧問税理士の対応に限界を感じたら、早めに専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。