報道によると、大阪国税局は、2022年12月25日、下請け先に虚偽の請求書を発行させ架空の外注費を計上し、約1億4,300万円の所得を隠し法人税約3,400万円を脱税したとして、配管工事業者と同社社長を法人税法違反の疑いで刑事告発しました。
分析
報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、元請け業者と下請け業者の力関係を利用し、下請け業者に虚偽の請求書を発行させる手口で、適正な外注費を支払ったと装い、2018~2020年の3年間で約1億4,300万円の所得を隠し法人税など約3,400万円を脱税したとして、法人税法違反の疑いで刑事告発された事案となります。
本件事案は、典型的な脱税事案であり、下請け業者を使って架空の外注費を支払い、支払った金額の大半を還流させるという手口により、刑事告発された事案となります。建設工事業界では未だにどんぶり勘定の業者も多いことから、現金でコツコツと資金を還流させていれば、足が付き難くバレないだろうと考えたのでしょう。3年間で1億4,300万円とのことで、1年あたり4,000万円強、1ヵ月当り300~400万円ほどになります。脱税協力を要請した下請け業者が多ければ多いほど1業者当たりの金額は少なくなりますのでバレ難くはなりますが、脱税額は雪だるま式に増えていきますので、いずれかのタイミングで摘発されて終わるというのが落ちと言えます。本件事案では、どのように脱税が発覚したかは明らかにされていませんが、タレコミなどがあり税務調査の段階で端緒を掴まれ、査察調査に切り替わった可能性が高いのではないかと推察しています。所轄税務署や国税局の資料調査課による税務調査から査察調査に切り替わる事案は、想像以上に多いのが現実です。査察調査に切り替わる事案の特徴の一つに、脱税が明らかであるにも関わらず、税務調査の段階で、口裏合わせをするなど脱税の事実を隠蔽し、最後まで否認し続けていることが挙げられます。税務調査からの切り替え事案では、刑事告発される可能性は非常に高くなる為、税務調査の段階で、しかるべき対応を行っておくことが肝要となります。
本件からの教訓としましては、多額の架空経費を計上し資金を還流させるという脱税事案が後を絶ちません。最初は少額であったものがバレないことを良いことに、年々、金額が太くなっていき、脱税が発覚する頃には、積もり積もって1億円を超えていたという事案が査察調査のターゲットになります。税務調査の段階でバレないこともありますし、バレたとしても一部のみで終了となる事案もあるかもしれませんが、いざ査察調査となれば、刑事告発されニュース報道されてしまいますので、ご家族や従業員、取引先などすべてに迷惑を掛けることになります。最悪の事態を回避する為にも、税務調査の段階で、早めに専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。