報道によると、大阪地検特捜部は、2022年12月6日、シンガポール法人など海外法人に架空の手数料や研修費などを支払ったように装う脱税スキームを、海外在住の元税理士らと共謀、指南し、虚偽の申告をさせ、約1億2,600万円の所得を隠し、法人税など約3,200万円を脱税したとして、シンガポール法人の会社役員を逮捕しました。
分析
報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、海外在住の元税理士と共謀し、既に法人税法違反などの罪で有罪判決が確定している不動産会社の元社長に対し、2014~2016年の3年間の法人税など、約3,200万円の脱税を指南した疑いがあり、法人税法違反の疑いで逮捕された事案となります。
本件事案は、典型的な脱税ブローカーによる脱税幇助事件で、多額の利益を上げている複数の法人に対し、脱税スキームを指南、海外法人に架空の手数料などを送金し、その大半を還流させるなどの手口で、依頼者から手数料として報酬を受け取っていた事案となります。逮捕された被疑者は、海外居住の為、自身が受け取った報酬については日本で課税されないことや海外を使った外-外の取引であった為、日本では足が付きにくいと考えたのでしょう。しかし、脱税の指南を受けた法人にガサ入れが入ったことに端を発し、海外で暗躍していた事実が明るみとなり、恐らく、本件事案だけでなく、他の複数の事案にも関わっているものとみて逮捕された可能性が高いと推察されます。最近、税理士の資格を持たないコンサルタントが節税策と称して脱税スキームを指南する事件が後を絶ちません。査察調査のサポートに携わっていると様々な脱税スキームを目の当たりにしますが、税理士から見ると常識では考えられない稚拙で杜撰なスキームである場合がほとんどです。海外だからバレないという発想は、既に一昔前の話しになっており、最近ではCRS(共通報告基準)により、毎年、膨大な海外口座情報などが国税庁に入ってきています。税理士の資格を持たないコンサルタントなどからの節税スキームには絶対乗らないことが最大の防御策になると考えます。
本件からの教訓としましては、再三申し上げている通り、急激に売上が増加した時に、魔が差し、怪しげなコンサルタントが勧めてくる脱税スキームに乗っかってしまい、結果として、査察調査となってしまう事案が少なくありません。こうした安易な脱税スキームを提案された場合には、まずは、顧問税理士に相談してみることをお勧めします。なお、顧問税理士に相談しても埒が明かない事案については、そこで思考停止せず、専門の税理士に相談して頂くことが、結果として、ご自身とご家族、従業員の皆さま方の身を守ることに繋がるのです。