報道によると、東京地検特捜部は、2021年11月30日、太陽光発電の用地等の売却に係る利益を過少に申告、約5億円の所得を隠し、2019年(平成30年度)の法人税など約1億2,500万円を脱税したとして、法人税法違反の疑いで、会社代表者と同役員の2人を逮捕し、2021年12月20日、起訴しました。
「逮捕」から「起訴」までの経緯
- ・2020年秋頃東京国税局の強制調査(が行われたと推測されます。)
- ・2021年11月30日東京地検特捜部が東京国税局査察部と合同で捜索、「逮捕」
- ・2021年12月20日東京地検特捜部が「起訴」
分析
報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本事案は、太陽光発電の用地や権利の売却係る利益を過少に申告し、法人税法違反などの疑いで逮捕、起訴された事案となります。一部報道では、土地等の売却で14億円ほどを得て、このうち9億円余りについて、コンサルティング契約を締結した様に仮装し、5億円ほどの所得を過少に申告した疑いがあると伝えられています。なお、脱税した資金は、事業資金の一部に充てられたほか、カジノなどで使っていたとのことです。本事案の様に、直接、売上を除外するのではなく、売上の一部を「前受金」として処理し、売上の計上を繰り延べる方法は、税務署や国税局の任意調査レベルでも少なからずありますが、やはり金額が「億」を超えると、査察調査の対象となることが伺い知れます。推測となりますが、「逮捕」される1年前くらいに、東京国税局が査察調査(ガサ入れ)に着手し、コンサルティング契約の実態把握など、関係者の聴取や反面調査などを行い、被疑事実の裏付けを取っていたと思われますが、被疑者が脱税事実(仮装・隠蔽)を否認するなど、刑事告発できない状態が続いていた為、被疑者らを逮捕し、東京地検特捜部との合同捜索に踏み切ったものと思われます。なお、報道では、両被告人の認否は明らかにされていませんが、公判で起訴事実を認めず、修正申告及び納税を行わなければ、実刑判決となる可能性もあるかと思います。
本件からの教訓としましては、契約書の偽造など仮装隠蔽による過少申告において、金額が「億」を超えると査察調査の対象となる可能性が高いことがお分かり頂けたかと思います。査察調査となれば、「ウソ」はバレてしまいますので、専門家に相談しながら、担当査察官に事実関係を丁寧に伝え、主張すべきは主張しますが、安易に否認しないことが肝要です。本事案でも、早い段階で、修正申告を行い、納税を行っていれば、逮捕されることはなかったのではないかと思います。ただ、修正申告や納税、予納のタイミングは、非常に重要となりますので、査察調査の専門家に相談しながら対応することをお勧めいたします。