脱税ニュース分析

No.004 宝石会社の社長が、脱税容疑で逮捕、起訴

報道によると、甲府地検は、2020年10月5日、架空経費を計上し、法人税など約3,800万円を脱税したとして、山梨県甲府市の宝石・貴金属の製造・加工を手掛ける会社と社長を法人税法違反などの罪で起訴した。検察は認否を明らかにしていない。なお、甲府地検は、2020年9月15日に、社長と従業員を逮捕していたが、従業員は、処分保留で釈放され、刑事上の責任は問えないとして、不起訴処分とされた。

「逮捕」から「起訴」までの経緯

  • 2020年9月15日山梨地検が「逮捕」 
  • 2020年10月5日山梨地検が「起訴」

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、海外でダイヤモンドを仕入れていると装って架空経費を計上し、所得を隠していたとみられ、余罪や隠した資金の行方などについて、山梨地検が調べている旨、また、被告は、香港の関連会社(卸会社)を経由し、タイからダイヤを輸入、仕入代金1億5,000万円は関連会社に送金しており、架空取引ではないと容疑を否認している旨、報道されています。
起訴内容は、2017年2月末までの1年間で約1億5,000万円の所得を隠したとされており、争点は、香港の関連会社に支払った1億5,000万円が架空経費か否かということになるかと思いますが、被告が否認しているにも拘わらず、起訴されたということは、仕入の実態や送金された資金の裏付けが取れているものと推察されます。また、余罪の追及もなされている様であり、実刑の可能性は高いものと思われます。なお、逮捕された従業員は、宝石の管理などを担当していたと見られ、不起訴処分となっておりますが、仮に、共犯として、関係書類の改ざん等に関与していたとしたならば、不起訴とはならず、起訴されたと見るべきでしょう。また、地検は、法人税法違反以外の別件も握っている可能性もあり、再逮捕された場合には、実刑となる実例もございます。

本件からの教訓としましては、海外だからバレないだろうという安易な考えを捨て、事前に、顧問税理士に節税の相談をしていれば、強制調査・逮捕・起訴という最悪の事態にならずに済んだのではないかと、大変悔やまれるところです。