脱税ニュース分析

No.013 トンネル工事会社を架空外注費計上による法人税法違反で刑事告発

報道によると、東京国税局は、2022年3月30日、下請け先に法人を設立させ架空の外注費を振込み、現金を引き出す手口により、約1億7,700万円の所得を隠し、法人税など約4,200万円を脱税したとして、会社と前社長のほか、経営コンサルタント会社の代表を刑事告発しました。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、脱税指南役である経営コンサルタント会社の代表と共謀し、下請け先(個人)に法人を設立させ、預かったキャッシュカードで振り込んだ架空の外注費を引き出し、3年間で約1.8億円の所得を隠蔽したとして、法人税法違反の疑いで刑事告発された事案となります。

本件事案は、売上増加を背景に、架空経費の計上により所得を隠蔽する、典型的な脱税事案と言えます。特に、建設業では、元請けと下請けの力関係を利用し、下請けに協力を要請、外注費を多めに支払った後、現金でキックバックを受けるという脱税事案が後を絶ちません。本件事案は、法人を設立するなど少し手は込んでいますが、あまりにも稚拙である為、脱税がバレるのは時間の問題だったと言えるでしょう。前社長のほか、経営コンサルタント会社の代表も刑事告発されていることから、恐らく、経営コンサルタントが前社長にスキームを持ち掛け、脱税を主導したのではないかと思われます。下請け先には、法人を設立すれば節税になるなどと誘い掛け、しかも、信じ難いことに、キャッシュカードまで取り上げ、現金を引き出すなど、手口は大胆で悪質です。報道では、法人を設立した下請け先は7人もいた模様で、頭数が多いほど、1社あたりの金額(年間800万円程度)を抑えられることから、バレにくいのではないかと考えていた節もありますが、さすがに、キャッシュカードまで取り上げられるのは普通ではありませんので、不満を抱き不審に思った下請け先が、国税局にタレコミをしたのがきっかけで、強制調査になったのではないかと推測されます。

本件からの教訓としましては、再三申し上げている通り、急激に売上が増加した時に、脱税に走ってしまう事案が少なくありません。合法的に税金をゼロにすることはできない訳ではありませんが、節税に成功している経営者の多くは、税理士に丸投げをせず、主体的に税金の仕組み学び、日頃から、顧問税理士に相談するなど、税金に対し意識が高い方がほとんどです。最近では、「事務専門税理士」に格安の報酬で決算申告を依頼しているケースが増えてきていますが、依頼者側は税理士が自分に有利な様に何とかやってくれるだろうと甘い期待を抱く一方、税理士側は格安の報酬なので事務以外のサービスはとてもでないができないと決め込んでおり、文字通り、安かろう悪かろうの悪循環に陥ってしまいます。本件事案を契機に、今一度、顧問税理士との関係を見直してみるのも良いかもしれません。