報道によると、金沢地方裁判所は、2021年3月30日、ビットコインなどの取引で得た所得、約2億円を申告せず、約7,700万円を脱税し、所得税法違反の罪に問われていた会社役員に対し、懲役1年、罰金1,800万円、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
本事案は、前回の「脱税ニュース分析」の続報となりまして、2021年1月8日に、金沢国税局調査査察部が所得税法違反の疑いで金沢地検に刑事告発したことはお伝えしていましたが、その後、2021年3月9日に、金沢裁判所で初公判が行われ、2021年3月30日に、判決が言い渡されるという、異例の速さで解決された事件となります。報道では、詳細は明らかにされていませんが、被告人は、初公判で起訴内容を認めていましたので、今回の判決を不服として控訴はしない可能性が高いと思われます。初公判において、検察側は、懲役1年、罰金2,200万円を求刑していましたが、判決では、懲役1年、罰金1,800万円と罰金刑が減刑されました。所得税法第238条では、以下の様に脱税(偽りその他不正の行為により所得税を免れること)の罰則が規定されています。脱税事件の罰金の相場は、脱税額の2~3割とされていますので、本事件でも相場通りの罰金額となっています。
- 10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又は、併科
- 免れた所得税の額が1,000万円を超える場合、情状により、罰金は、1,000万円を超え、免れた所得税に相当する金額以下とすることができる。
また、執行猶予判決となった理由としては、当初から脱税を認め、修正申告を行い納税も済ませていたことが、情状酌量に繋がったものと考えられます。なお、悪質で脱税額が大きい事件や、詐欺や業務上横領など併合事件の場合には、初犯であっても、実刑判決となる可能性が高くなりますので注意が必要です。
本件からの教訓としましては、結果として、刑事告発され有罪判決となってしまった事案となりますが、早い段階で、修正申告をし、納税することの重要性をご理解頂けたのではないかと思います。査察調査に入られたものの、脱税の故意がなく、単なる申告漏れの場合であっても、最終的には、修正申告と納税を行うことで査察調査は終了となります。修正申告や納税、予納(最終税額確定前の仮納付)のタイミングについては、非常に重要となりますので、査察調査の専門家に相談しながら行うことをお勧めいたします。