報道によると、東京地検特捜部は、2020年9月3日、無申告により、法人税など約6,400万円を脱税したとして、東京都世田谷区のマネジメント会社の社長を法人税法違反などの罪で在宅起訴した。認否は明らかにしていない。東京国税局は、2018年に強制調査を行い、東京地検に刑事告発していた。
「強制調査」から「起訴」までの経緯
- ・2018年7月頃東京国税局が「強制調査」*2018年8月に週刊誌で報道
- ・2019年7月東京国税局が東京地検に「刑事告発」
- ・2020年9月東京地検特捜部が「在宅起訴」
報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件は、東京国税局査察部のガサ入れから刑事告発まで約1年、さらに、東京地検特捜部による起訴まで約1年2ヵ月もかかった事案です。報道では、無申告とされ、また、(脱税の)認否を明らかにしていないとされていますので、申告漏れ所得額の認定や、脱税の意図や認識に係る証拠集めに時間を要したものと考えられます。本件の調査対象年分は、2016年11月期、2017年11月期の2期で、約1億3,100万円の申告漏れ、法人税 約3,100万円、消費税 約3,300万円、合計 約6,400万円を脱税し、法人税法違反、及び、消費税法違反の嫌疑で起訴されています。なお、被告人は、既に、期限後申告、及び、納税を済ませていること、また、仕事から身を引き、反省していることなどが伝えられており、通常であれば、執行猶予の可能性も考えられますが、脱税の故意については否認している可能性もあり、その他別件(業務上横領等)が成立した場合には、実刑判決は免れない事案であると思料します。
本件のような無申告事案について、特に、悪質性の高い事案に厳正に対処するため、平成23年に、「単純無申告ほ脱犯」が創設されました。無申告事案は、「偽りその他不正行為」を伴わないことから、改正前までは、「脱税犯」とはならず、申告書不提出罪としてしか罰することはできませんでしたが、改正後は、「故意」に申告書を提出しなかった場合には、「単純無申告ほ脱罪」が適用されることになりました。無申告事案は、平成26年度に最初の事案が告発されてから、調査重点事案とされ、毎年、積極的に強制調査が行われており、令和元年度では、過去最多の27件が告発されています。
年度 | 平成25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 令和1 |
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告発件数 | 14 | 11 | 13 | 17 | 21 | 18 | 27 |
本件からの教訓としましては、強制調査という最悪の事態になる前に、無申告のまま放って置かずに、きちんと顧問税理士を付けて、常日頃から、税務調査(査察調査を含む)対策を行う必要性について、ご認識頂けたかと思います。