脱税ニュース分析

No.035 WEB関連会社が株式譲渡費用の水増しなどにより刑事告発

報道によると、WEB関連会社が所有する関係会社株式を他社に譲渡する際、コンサルタント会社へ支払う手数料を水増しするなど、約3億円の所得を隠していたほか、約1,300万円の消費税不正還付を受けていた疑いで、刑事告発されました。

分析

報道では、事件の詳細は明らかにされていませんが、本件事案は、オーナー会社の代表がWEB関連会社を通じて所有していた関係会社2社の株式を他社に譲渡する際、コンサルタント会社へ支払う手数料を水増しするなどして、合計で約3億円の所得を過少申告した疑いで刑事告発された事案であり、経費水増しによるキックバックの手口を用いた典型的な脱税事案となります。多くの経営者は、一時的に多額の収入を得た場合、何とかして所得を圧縮できないか模索する訳ですが、合法的な節税策の選択肢も限られていることから、頭を悩ませながらも最終的には適正な申告を行い納税するケースがほとんどです。本件事案のように、一部の経営者は、目の前のお金に目がくらみ正常な判断ができなくなるのでしょう。どうせバレないだろうと安易な考えで脱税に手を染めてしまうという事案が後を絶ちません。通常、現金商売など不特定多数の個人を相手にした商売でない限り、売上をごまかすことは難しく、何とか経費を多く計上できないか頭を悩ませる訳です。しかし、架空経費であれば、どんなに口裏合わせをしようとも最終的には反面調査などでバレてしまう為、消去法的に、経費水増しによるキックバックに行き着いてしまう訳です。この仕組みは至って単純で、取引先と共謀のうえ、本来の請求額に水増し分を上乗せして請求してもらい請求書通りの金額を支払いますが、水増し額から10%程度の(脱税)協力金を差し引いた残額を、現金でキックバックを受けるのです。この手口は、(脱税)協力者が必要になるものの、本来の請求額に水増しするだけなので、表面的には通常の取引を行っているように見え、発覚し難い手口であると考えられているのか、後を絶たないのが現状です。しかし、いざ税務調査となれば発覚は逃れられません。入出金の大部分を、銀行口座を通じて行っている会社が、多額の現金を引き出せば、当然怪しまれる訳で、銀行窓口でも出金目的など確認を求められ、また出金記録も残りますので足が付くことになります。本件事案が発覚したきっかけは明らかにされていませんが、消費税不正還付の調査がきっかけとなったか、コンサルタント会社の調査で多額の現金出金を怪しまれ発覚した可能性もあるのではないかと推察します。 本件事案からの教訓としましては、脱税は想定もしていないきっかけで、バレてしまうということに尽きます。バレないだろうと不安を感じながら過ごさなければならないのであれば、払うものは払い、堂々と過ごした方が賢明であることは明らかです。突如として多額の収入を得た場合などは、資格を持たないコンサルタントなどに相談するのではなく、査察調査の経験もある専門の税理士に相談することを強くお勧め致します。